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「フクロウ体質」は、できれば早めに卒業したい

―目標は「早起き」だけではなく、自信を取り戻すこと―

前回は、朝起きられない子を単純に

「怠けている」
「根性が足りない」

と考えない方がよい、という話を書きました。

では、もともと夜型の「フクロウ」なら、そのままでよいのでしょうか。

私は、

フクロウであることを責める必要はない。
でも、できることなら若いうちから少しずつ「フクロウ」を卒業していった方が、その後の人生は楽になる

と考えています。


社会はかなり「ヒバリ型」にできています

本人が夜型であること自体は、決して悪いことではありません。

しかし現実の社会は、かなり朝型にできています。

学校は朝から始まります。

高校や大学の入学試験も、多くは朝から始まります。

資格試験もそうです。

就職活動の面接も、自分が一番調子のよい夕方に合わせてもらえるとは限りません。

夜型の人は、午後や夕方なら十分に力を発揮できても、午前中にはまだ頭も体も十分に動いていないことがあります。

これは能力が低いわけではありません。

本人が力を発揮しやすい時間と、社会が求める時間がずれている

ということです。

しかし入試の日に、

「私はフクロウなので、午後から試験を受けさせてください」

というわけにはいきません。

社会生活を送る以上、朝から活動しなければならない場面はどうしてもあります。

だから私は、本人につらい思いをさせない方法で、少しずつ朝の生活に適応できるようにしていくことには意味があると思っています。


「どうして私は朝から動けないのだろう」

フクロウ型の人から、こんな話を聞くことがあります。

「どうして隣の奥さんは、朝早くからあんなに元気に動けるんだろう」

自分は朝起きるだけでもつらい。

それなのに周りを見ると、朝早くから起きて、朝食を作り、洗濯をして、家族を送り出して、てきぱきと動いている人がいる。

すると、

「どうして自分にはできないのだろう」

「私がだらしないのだろうか」

「自分だけ何かおかしいのではないか」

と、不安になることがあります。

子どもでも同じです。

周囲の子は普通に朝起きて学校へ行っている。

自分だけ起きられない。

遅刻する。

休んでしまう。

そういう経験が続けば、

「みんなが普通にできることを、自分だけできない」

という感覚が積み重なっていきます。

そして、それは少しずつ自信を奪っていきます。


フクロウを放っておきたくない理由

私は、ここが「フクロウ体質」をそのままにしておきたくない理由の一つだと思っています。

朝起きられないこと自体もつらいのですが、その結果として、

毎朝家族から叱られる。

遅刻する。

学校を休む。

勉強についていけなくなる。

周囲と比べられる。

自分でも周囲と比べてしまう。

そうした小さな失敗体験が毎日のように積み重なってしまいます。

それでは、もともと明るかった人でも消極的になってしまうかもしれません。

反対に、治療によって朝のつらさが少しずつ改善してくると、

「今日は起きられた」

「朝から動けた」

「遅刻せずに学校へ行けた」

「試験を普通に受けられた」

という経験が増えていきます。

すると、

「自分にもできる」

という感覚が戻ってきます。


治療すると「性格が明るくなった」ように見えることがあります

診療をしていて興味深いのは、「フクロウ体質」が改善してくるにつれて、

表情が明るくなる。

会話が増える。

自分から行動するようになる。

以前より積極的になる。

そんな変化を経験することがあることです。

もちろん、漢方薬が直接「性格を明るくする」という意味ではありません。

体調が楽になり、できることが増える。

失敗することが減る。

家族から叱られることも減る。

そして、

「自分は大丈夫」
「自分にもできる」

と思えるようになる。

その自信が、表情や行動に表れてくるのではないかと思っています。

私は、この自信を取り戻すことまで含めて治療だと考えています。


将来のことを考えても、できれば早めに卒業したい

夜型の生活と気分の落ち込みとの関連は、これまで多く研究されています。

また女性では、妊娠から出産後の時期に、夜型の人で周産期の抑うつ症状が多かったという報告もあります。

もちろん、

「夜型だから産後うつになる」

という単純な話ではありません。

妊娠や出産後は、授乳や夜泣きなどで睡眠そのものが大きく乱れますし、精神的・社会的な要因も関係します。

研究結果もすべて一致しているわけではありません。

ただ、人生の中には、自分の体内時計に合わせて生活できない時期があります。

受験。

進学。

就職。

仕事。

妊娠。

出産。

育児。

そうしたことを考えても、若いうちから無理のない形で生活リズムを整えておくことには意味があると思っています。


だからといって「根性で早起き」ではありません

ここはとても大切です。

フクロウを卒業する=毎朝無理やり起こす

ではありません。

睡眠時間を削って、朝早く起こせばよいわけでもありません。

朝起きられない人には、一人ひとり理由があります。

睡眠・覚醒のリズムが後ろへずれている人。

立ちくらみがある人。

頭痛や頭重感が強い人。

胃腸が弱い人。

冷えが強い人。

疲れやすい人。

精神的なストレスを抱えている人。

いくつもの要因が重なっている人もいます。

さらに、起立性調節障害、睡眠・覚醒リズムの異常、貧血、甲状腺疾患、睡眠時無呼吸などの病気が隠れている場合もあります。

ですから、

「なぜ、この人は朝がつらいのか」

をまず考える必要があります。


漢方でも「フクロウならこの薬」ではありません

漢方治療でも同じです。

「朝起きられない」という一つの症状だけを聞いて、漢方薬を決めるわけではありません。

立ちくらみはあるのか。

頭痛や頭重感はあるのか。

胃腸の調子はどうか。

冷えはあるのか。

疲れやすいのか。

夜は眠れるのか。

食欲はあるのか。

普段どのような生活をしているのか。

そうしたことを実際に診て、その人全体から治療を考えます。

ですから、

「フクロウ体質にはこの漢方薬」

というものではありません。

同じように朝起きられない人でも、体の状態が違えば、選ぶ治療も違います。

ネットで処方名を探して自己判断するのではなく、一度きちんと診察を受けていただきたいと思います。


目標は「早起き」だけではありません

私が目指しているのは、単に目覚まし時計で早く起きられるようにすることではありません。

朝起きられる。

朝から体が動く。

学校へ行ける。

試験を受けられる。

仕事ができる。

そして、

「自分は他の人と同じようにできる」

と思えるようになる。

その自信は、学校生活だけではなく、その後の進学、仕事、人間関係など、長い人生にも影響していくと思います。

私自身も若いころは「プチ・フクロウ」でした。

高校時代の寮生活で朝起きる習慣がつき、幸い大きな問題なく社会生活に適応することができました。

それでも今でも、遅くまで寝てよい日は楽です(笑)。

だから、

「フクロウなんだから根性で起こせばいい」

とは思いません。

同時に、

「生まれつきフクロウだから仕方がない」

と最初から諦める必要もないと思っています。

本人につらい思いをさせない方法で体調を整え、生活のリズムを少しずつ調整していく。

そして、できることなら若いうちに「フクロウ」を卒業して、自分に自信を持って生活できるようになる。

それが理想だと思っています。


朝起きられない。

午前中は体調が悪い。

立ちくらみや頭痛がある。

夕方から夜になると元気になる。

そして、そのことで学校生活や日常生活に困り始めている。

そんな方がおられたら、

「怠けている」
「性格の問題だ」

と決めつける前に、一度ご相談ください。

どの漢方薬が合うのかは、実際に診察してみなければ分かりません。

まず、

「なぜ、この人は朝がつらいのだろう?」

と考えるところから始めます。

根性で無理やり起こすのではなく、

朝から自分の力を発揮できる体に少しずつ近づけていく。

その先にある「自信を取り戻すこと」こそ、私はとても大切だと思っています。

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