―「怠けている」と決めつける前に―
最近、筑波大学の柳沢正史先生がテレビなどに出演され、睡眠についてお話しされる機会が増えています。
柳沢先生は、睡眠と覚醒に重要な「オレキシン」を発見された、世界的な睡眠研究者です。
先生のお話を聞いていて改めて興味深いと思ったのが、
人には「朝型」と「夜型」があり、特に思春期から若い年代は、生物学的にも夜型になりやすい
ということです。
若い人が朝起きにくいことを、すべて生活態度や本人の意志の弱さだけで説明することはできないようです。
昔読んだ三木成夫先生の「朝型・夜型」
この話を聞いていて、昔読んだ解剖学者・三木成夫先生の本を思い出しました。
三木先生は東京大学医学部で解剖学を学び、その後、東京医科歯科大学を経て東京藝術大学教授となった、非常に独創的な解剖学者です。
人間の身体を単なる臓器の集合ではなく、進化や生命のリズムという視点から考えられた先生でした。
著書『内臓とこころ』にも「夜型と朝型」「夜型の問題」という項目があります。
私は昔読んだときから、
朝早くから元気に活動できる人は「ヒバリ」
夜になると元気になる人は「フクロウ」
というイメージで覚えています。
今でいう「クロノタイプ」、つまり朝型・夜型という考え方にも通じるものがあります。
何十年も前に三木先生が「生命のリズム」として考えていたことが、現代の睡眠医学によって別の角度から解明されてきているようで、とても興味深く感じます。
実は、私も「プチ・フクロウ」でした
ここで白状すると、私自身も若いころは、どちらかといえば**「プチ・フクロウ」**でした。
高校時代は寮生活でした。
朝は決まった時間に起きなければならず、半ば強制的に朝型の生活をしていました。
それを毎日続けたことで習慣になったのか、幸い私は大きな問題なく乗り越えることができました。
ただ、今でも休日などに遅くまで寝てよい日は、
「やっぱり、こっちの方が楽だなあ」
と思います(笑)。
ですから、朝が苦手な人の気持ちは少し分かります。
でも、自分が寮生活で何とか適応できたからといって、
「自分もできたのだから、あなたも頑張れば起きられる」
とは思いません。
私の場合は幸い適応できただけかもしれないからです。
「朝起きられない=怠けている」ではありません
診療をしていると、
「何度起こしても起きません」
「夜は元気なのに、朝になると動けません」
「学校へ行く時間になると具合が悪くなります」
といった相談があります。
もちろん、夜遅くまでスマートフォンやゲームをしていて、単純に睡眠時間が足りていない場合もあります。
しかし、それだけでは説明できない子もいます。
早く布団に入っても眠れない。
朝になると体が鉛のように重い。
立ち上がるとふらつく。
頭が痛い、頭が重い。
朝は食欲がなく、気持ちが悪い。
午前中は頭が働かない。
ところが、夕方になると少しずつ元気になって、夜には普通に話をしている。
こういう子は実際にいます。
本人だって、
「明日はちゃんと起きよう」
と思って寝ているはずです。
それでも起きられないのです。
根性論で起こし続ければよいのでしょうか
そんな子に、
「気合いが足りない」
「夜更かしするからだ」
「みんな起きているんだから起きなさい」
「とにかく学校へ行きなさい」
と言い続ける。
私は、これは少し危険だと思っています。
本人も頑張っているのに起きられない。
そこで毎日叱られていると、
「どうして自分だけできないのだろう」
「自分は怠け者なのだろうか」
「自分はダメな人間なのかもしれない」
と、自信をなくしてしまいます。
もともとの体調不良や睡眠不足に、自己否定や学校への不安まで重なれば、学校へ行くことそのものが苦痛になってしまいます。
不登校や抑うつにはさまざまな原因がありますので、すべてを睡眠の問題で説明することはできません。
しかし、
朝起きられない子を根性だけで起こし続ければ解決する
というほど単純な問題でもありません。
「どうやって起こすか」より「なぜ起きられないのか」
私は、夜になると元気なのに朝が非常につらい人を、説明のために
「フクロウ体質」
と呼ぶことがあります。
もちろん正式な病名ではありません。
同じ「朝起きられない」という症状でも、その背景は一人ひとり違います。
睡眠時間が足りない人。
体内時計が後ろへずれている人。
立ちくらみが強い人。
頭痛や頭重感がある人。
胃腸が弱く、朝食が食べられない人。
冷えが強い人。
疲れやすい人。
精神的な負担を抱えている人。
いろいろです。
ですから大切なのは、
「どうやって朝たたき起こすか」ではなく、
「なぜ、この子は朝起きられないのか」
を考えることだと思います。
朝起きられないことを、まず本人の性格や根性のせいにしない。
そこが第一歩です。
では、
「フクロウ体質なら、そのままでよいのでしょうか?」
私はそうとも思っていません。
できることなら、本人につらい思いをさせず、若いうちに少しずつ「フクロウ」を卒業できた方がよいのではないか。
次回は、その理由と漢方治療について書いてみたいと思います。
